hunting 狩猟とは(第二十四話)
document2010january(後編)

勢子は奥へと向かうモノへの追跡を望み決断を待ちじっと見詰めている しかし山裾から上げた

3人の労を無にする事は出来ず 決定していた入山地点へと向かう 実は其の段階では確信が

持てず説明する事も無かったのだが 大雪の中厳しさが増す奥へ更に向うとは到底思えなかった

きっと何処かで踵を返し元居た寝屋山に戻っているそんな気がしてたからだ 諦めきれない素振

見せる勢子を促し本流大谷を降る 渓中の岸は流水に洗われ一気に距離を稼げた 此れまで

何度も攻め熟知してる筈の山も 何時もとは違う攻め方を求め勢子が自ら認める唯一の弱点

方向音痴?地理への不安に何度も確認する まぁ進退窮まれば最後の手段本流大谷方向へと

降りれば山裾 向こうの3人と繋ぎはとれる心配は無いだろう  此れから勢子が上る尾根先端

からこの猪は出ていた 場所は堰堤の上に大量の白砂が堆積した広河原で 流砂に洗われて

磨かれたろう立ち枯れ骨と化し数本を残す木の下へとベテランの待ち場を決め無言で指差す

此処から先は全員別j行動となるが 未だ確信の持てない勢子をこの尾根が見渡せる位置に呼び

要所を指し示した 痩せ尾根が急に段差となるその下に寝屋が在り 其処で起し其の侭尾根を

降れば先刻配置したベテランの矢に もし裏側に落ちたなら向こうから上げた中段の中待ちへ

其処を外せば 其の後方で構える2人の何れかの手に掛かる 攀じ登り出す犬を曳いた勢子を

見送って 尾根に向かって右下へと切れ込んだ枝谷を進み出す 勢子からは常に右下に々と

位地するよう意識しながら進んだ
右へ折れ直ぐ暗い狭間に落差15mばかりの

滝が現れる 左岸の斜面積雪を刻み階段状と

踏み締めながら滝上に出ると 其処から小滝と

落ち込み段差が連なるこの谷の荒い素顔を現し

どんどん駆け上がる 勢子の上る尾根へは急な

斜面の連続で 落ちてくる位置はそうは多くない

野獣の渡りは凡そ2箇所 積雪量から奥は捨て

手前の左岸小高い位置に昔炭焼きが為され

今は其の痕跡だけしか残らない窯跡に構えよう

積雪が来る前の猟山にて
すっかり凹凸を包み込む谷間は油断すると踏み抜き一気に数m落ちてしまう 記憶の糸を手繰り

更に慎重に1歩々前進し何とか目的地に到着その時ゼイゼイ荒かった息を呑んだ 右の山から

左の山にくっきりと残るワリ そう今勢子が上る尾根の指し示した位地に向かって居るではないか

やはり睨んだ通り夜半の稼ぎを済ませ戻って居たのか?  この状況を勢子に伝えようと無線の

マイクを握った途端 バーン。。左上爪が向いた方角で一発鳴った まだOKはしていない裾方面

待ちに向かった3名もまだ辿り着いて居ないかもしれない 勢子からの一報が入らない事の推移

憶測しながら確認するタイミングを測る 1発だけなら倒したのかもしれない? そろ々大丈夫かと

計り出した頃に バァーン。。もう1発 間を開け小さく呼びかけた ”おぃKさん何だ”其処でやっと

事態の報告が入る ”あかん回転不良で2の矢撃てず手で詰め替え撃ったが半矢にしたようだ

判ったモノは何だ?””猪。。猪。。””どっち向かった?””下 下に降りた” 可也慌て混迷してる

様相がシーバー越しに窺える 詳しい経緯は積雪に難儀し犬を放し上ると件の寝屋に突っ込み

相手を発見至近距離でバックショット1発撃ったが まるで意に介さずならばスラッグの2発めでと

狙うも自動銃の欠点回転不良にて次弾は装填されておらず機を失した ならばと手で詰め替え

再度姿を見せた奴にもう1発しかし平然と姿を下に向け消えたと? 向こう側に落ちて行ったなら

裾から上げた3本に任せて置けば良い 手負いにして犬が追いつき絡み出せば反撃に移るだろう

攻撃を避け跳ぶ場所がこの雪では限られ裂かれる恐れも残る 下の白砂河原に置いたベテランを

行かせるか?その間に抜けられてしまう恐れも残る 此処は自分が下りカバーしなければ此処を

空けて良か否か?決断には迷いが 勢子のの逼迫したコールに応えなければ意を決し足元の

背嚢を背負い銃を背にさっき上った谷を下りだした。。
高さ3mばかりの小滝を降りんと身を屈めた

その時背後に何かの気配を感じ振り返るが

気配の主は影も形も無く谷間は 静まり返る

気のせいだったか?” 今度こそと足を踏み

出すも背後の気配は更に強く?再び振り返る

何か居る! 傍らの岩をよじ登り見渡してみた

一面覆われた積雪の中に伸びる木立は黒く

目が色彩を失ったかの錯覚を感じる ”ん?あれは”

白い小山の上に小さな突起物が2個?其れが

何なのか直ぐには思い付かなかった其処の位置は

さっきまで自分が立っていた獣道の延長線に成る

残雪時の猪ワリ
暫し見据えて居た記憶が残るしかしほんの瞬き程度の時の経過だったのかもしれない 後からの

辿る記憶ほど曖昧なものはないから 瞬間雪の中に消えた突起物は今度は一瞬全貌を現した

猪だ! 視認と同時無意識に銃は肩に安全装置は外され引き金に指が 奴は右を向いている

その前肩付け根辺り積雪に隠されて見えないのだが見当をつけ引き金を絞った バッカン。。。

ライフル特有の重く余韻残る発砲音は谷間に響き 奴は跳び全身を現した バッカン。。。2弾目

撃つと同時に雪の中に姿を隠した 倒れたか? 手ごたえは残る 次に奴は谷の流水に削られ

見通しの利く渓に姿を現し あの獣道渡らんと渓水に脚を浸けた バッカン。。確実に前肩付け根

ヒット 308/180グレインソフトポイント弾が吸い込まれるのを肉眼で確認 しかし奴は止まらない

バッカン。。。4発目は渓から上がる岸で放った 其処で奴は腰を落としドスンドスン激しく地響き

立てながら暴れ回る 其の時視界の左隅に2頭の犬を捉えた まずい此の侭で咬みに入れば

命を懸けた最後の抵抗に受傷或いは絶命しかねない 駆け寄り腰貯めで5発目 ドン!響きの

弱い潜もった発砲音にやっと抵抗は止んだ 見ると全弾5発とも前肩付け根20センチ四方に

着弾割と近い射撃で抜けて居た 勢子の放った2発初弾のバックショットは皮1枚で全て止り

2の矢スラッグに至っては アバラを突き破れず変形し食い込み 見かけより可也重かったのは

その丸々とした筋肉の締まりが重量感を増した所以だったのだろう? 実に矢強い相手だった。。

                                                   oozeki