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出猟日記 2008

始めに

『一緒に行こう。。』 墓石に語りかけ 徐に
その人が眠る場所の 敷石をひとつ摘むと
ポケットに押し込んだ。。
訪れ来る人が居れば又去る人も居て もう
どれだけそんな繰り返しを経てきたのだろう
感傷に浸り想い出を懐かしむ余裕は無い
各方面から望まれ有るべき姿を目指す

最後まで猟野に思いを馳せていた老猟師は
此れからも私の視線を通し 一緒に駆け回り
そして見守ってくれるだろう

                      oozeki
2008.11.15 ・・曇り一時雨・・
やたら多く感じる 公共事業の名の下に奥地での林道工事は 至る場所でこんな立派な路は
一体誰が使うのか等の疑問を湧かせる 広々と綺麗に舗装為された凡そ人が訪れないだろう
轍の跡が如実に物語る ああっ。。向かい山の林道先から今日もチェーンソーの音が??

持ち場に着くのは私が最後の筈 頂の巨木に寄りかかると 回り込んだ勢子が放犬をつげる

静寂が・・・ 鳴きが入らない?  ”ん後ろから来たか”  後方から何かが近づく気配がする
犬のマーカーは振り切っている 静かに顔だけを其方に向ける 矢張り犬か。 密集したススキ
藪から跳び出したのは先程まで一緒に登ってきた二頭 この高い位置には不在かな? 等と
眺めていると 一段下の死角からガラガラゴロゴロと野獣の移動する気配 匂跡拾ってた二頭は
一気に尾根伝いに駆けて行き激しい鳴きが入った ”起した猪かもしれん” 鳴きが入った位置は
良く猪が寝屋に選ぶ場所で 其処から大きく尾根を左に切った 良し囲みの中に追い込んだぞ

遥か彼方の待ちで発砲音一発。。。

2008.11.23・・晴れ・・
急で下生えが多く見通し悪い 4.50年もの杉の植林帯をどんどん高度を稼ぐ 息が上がる
右手にはあの人目に触れること無い岩盤で占められる大滝が姿を その頭に出ようと急ぐ
高い位置を抜ける林道使い回り込んだ勢子は GOはまだかと焦れて盛んに打診してくる
も少し時間をくれあの滝の上に出なければ又奴は其処を抜ける もう此処まで来れば頭か?
其れくらいの高度で 野獣により良く踏みしめられるルートを発見 その道を辿り右に進むと
目指すポイントへと出た しかし撃てるだろう範囲12.3m前に跳び出したら3歩4歩で自分が座る
場所まで届いてしまう 左手は急斜面の壁右手は幾らも行かず奈落の底滝の頭 一本道の獣道
身の避けどころが見当たらないようだ しかし此処しかルート纏まり迎え撃つ位置は無く 覚悟決め
座り込んでGOを告げた マーカーには盛んに追い鳴きが入る しかす遥か彼方配置した本待ちは
発砲は無い  1時間?もう30分?? 2時間も暗い藪中で潜んでいると向かいの良く猪の寝る
松の辺りで鳴きが入る”来る?” 此方に向けモノが動くのを察知緊張が走る バキッバキッ木立を
踏みしめる音 猪ではない鹿それも可也の大物だ 藪中で息を殺しじっと姿を現すだろう入り口に
銃を向け動けない。。。長い様で短い時の経過 藪の向こうにちらり白いものが見えた 数秒後
勢い良く跳びこんで真っ黒な巨体を現にした大鹿 1跳び2跳び。。。。此方の存在に気付くも
其の侭の勢いで角を向け突っ込んでくる 4mばかり先に横たわる倒木を跳び越えれば間違いなく
私と衝突するだろう逃げ場は無い 奴の視線と視線が絡み合った瞬間 ドン!引鉄を落とし奴は
右下滝の頭向け崩れ落ちて行く  全ては1秒も無くコンマ何秒の出来事だった

2008.11.30 ・・曇り後雨・・
尾根筋に吹き上げてくる風は冷たく いよいよ
冬本番を感じさせる 冷気を運ぶ風はまだ薄着の
体温を奪いがたがた震えが止らなくなってきた
いよいよ冬本番の装備に移行しないといけないか

其処だなと思える位置から鳴き出した 先導犬の
マーカー拾うと此方向け近づいて居る? さぁこい
この中待ち 尾根の低みを(鞍部)を超えて行く筈
パキッ! 上方で小枝を踏み折る痕跡 其処から
落ちてくるか? ガサガサ。。小生えの密集する
高い位置をちらり垣間見せ横切った しかし相手の
正体が判らなければ発砲は出来ない。。。僅か白い
箇所が見えたから鹿かもしれない??
2.30m後ろから放されず二頭の猟犬が付いて行った

この先↑小生えの緑を抜けて

2008.12.28 ・・氷雨・・
南部の猟友による積雪40センチは何処へやら? 麓には僅かの積雪も見受けられない おまけに
ポツポツ落ちていた水滴も段々激しく本降りに成り出す 方々へ散った脚見の報告は芳しくないし
年の瀬早退の面子も居る事から一日経ては居るのだが 15貫程のたった一つの痕跡を追う事に
もし其処に上がれば居場所は其処しかなく間違いなく元割れに落ちる しかし森の中には僅かな
積雪も無い事から 行き先が拾いきれない しかたない遣るか? 

吹きさらしの場所は 駆け下るだろう位置で上方を凝視しなければ成らない 叩き付ける氷雨は
襟元から染み身体を冷やす おまけにぼたぼたとハダラが(木の枝から纏まり落ちる水滴) 
動きの取れない身体を叩く  まだか? そぅ思い勢子に状況報告を促した僅か後に。。。発砲
数秒の間を空け2発目 又鳴った3発目?? 鳴らし方がおかしいぞぉ?首尾は??如何に